P.F.ドラッカー『経営者の条件』⑦

“マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909-2005)の名著『経営者の条件』<ダイヤモンド社>より名語録をご紹介していきます。【第7弾】

成果をあげるには意思決定の数を多くしてはならない。重要な意思決定に集中しなければならない。個々の問題ではなく根本的なことについて考えなければならない。問題の根本をよく理解して決定しなければならない”

“真に例外的な問題を除き、あらゆるケースが基本の理解に基づく解決策を必要とする。原則、方針、基本による解決を必要とする。一度正しい基本を得るならば、同じ状況から発する問題はすべて実務的に処理できる”

“「法律の多い国は無能な法律家の国である」という古い諺がある。このような国は、あらゆる問題を法の一般原則のもとにおける個々の問題としてではなく、すべて特殊な問題として解決しようとする”

“決定においては、何が正しいかを考えなければならない。やがては妥協が必要になるからこそ、誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタートしてはならない”

“決定の実行が具体的な手順として誰か特定の人の仕事と責任になるまでは、いかなる決定も行われていないに等しい。それまでは意図があるだけである”

“エグゼクティブが直面する問題は、満場一致で決められるようなものではない。相反する意見の衝突異なる視点との対話異なる判断の間の選択があって初めて、よく行いうる。したがって、決定において最も重要なことは、意見の不一致が存在しないときには決定を行うべきではないということである”

“知識やスキルは身につけなければならない。仕事のキャリアが進むにつれて新しい仕事の習慣を身につけていかなければならない。しかし、知識やスキルをいかに身につけたとしても、まず初めに成果をあげるための能力を向上させておかなければ何の役にも立たない

“知識労働者も経済的な報酬を要求する。報酬の不足は問題である。だが報酬だけでは十分ではない。知識労働者は機会、達成、自己実現、価値を必要とする。彼らは自らを成果をあげる者にすることによってのみ、それらの満足を得ることができる”

P.F.ドラッカー『経営者の条件』⑥

“マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909-2005)の名著『経営者の条件』<ダイヤモンド社>より名語録をご紹介していきます。【第6弾】

“成果をあげるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない

“自らの強みを生かそうとすれば、その強みを重要な機会に集中する必要を認識する。事実、それ以外に成果をあげる方法はない。二つはおろか、一つでさえ、よい仕事をすることは難しいという現実が集中を要求する”

“時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数と種類は多くなる”

“集中のための第一の原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか」を問うことである”

もはや生産的でなくなった過去のもののために資源を投じてはならない。第一級の資源、特に人の強みという稀少な資源を昨日の活動から引き揚げ、明日の機会に充てなければならない”

“成果をあげる者は、新しい活動を始める前に必ず古い活動を捨てる。肥満防止のためである。組織は油断するとすぐ体型を崩し、しまりをなくし、扱いがたいものとなる。人からなる組織も、生物の組織と同じようにスマートかつ筋肉質であり続けなければならない”

古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である。アイディアが不足している組織はない。創造力が問題なのではない。せっかくのよいアイディアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが問題である。みなが昨日の仕事に忙しい”

“トップ本来の仕事は、昨日に由来する危機を解決することではなく、今日と違う明日をつくり出すことであり、それゆえに、常に後回しにしようと思えばできる仕事である。状況の圧力は常に昨日を優先する

“優先順位の決定には、いくつか重要な原則がある。第一に、過去ではなく未来を選ぶ。第二に問題ではなく機会に焦点を合わせる。第三に、横並びではなく独自性をもつ。第四に、無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選ぶ”

“一般的にいって、小さくて新しいものの、大きくて新しいものも、危険で困難かつ不確実なことには変わりはない。問題の解決、すなわち昨日の均衡の回復などよりも、機会を成果に変えることのほうがはるかに生産的である

“集中とは、「真に意味あることは何か」「最も重要なことは何か」という観点から時間と仕事について自ら意思決定をする勇気のことである。この集中こそ、時間や仕事の従者となることなくそれらの主人となるための唯一の方法である”

P.F.ドラッカー『経営者の条件』⑤

“マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909-2005)の名著『経営者の条件』<ダイヤモンド社>より名語録をご紹介していきます。【第5弾】

“成果をあげるエグゼクティブは、人間の強みを生かす。彼らは弱みを中心に据えてはならないことを知っている。強みこそが機会である。強みを生かすことが、組織に特有の目的である”

“人事上の決定においては、人間の弱みを最小限に抑えるのではなく、強みを最大限に発揮させなければならない。人間の弱みに着目して組織の人事を行おうとすれば、最もうまくいっても、平凡な結果に終わる”

“できることではなく、できないことに気をとられ、弱みを避けようとするようなエグゼクティブは、彼自身が弱い人間である。おそらく彼は、強い人間に脅威を感じるのかもしれない。しかし、部下が強みをもっており、成果をあげるからという理由で苦労した者など一人もいない

“他人に成果をあげさせるためには、決して「彼と私はうまくやっていけるか」を考えてはならない。「彼はどのような貢献ができるか」を問わなければならない。また、「何ができないか」を考えてはならない。常に「何を非常によくできるか」を考えなければならない”

“人間の卓越性は、一つの分野、あるいはわずかの分野においてしか実現されない。多くの分野において卓越した業績のある人間は、存在しない

“弱みを基盤にすることは、組織本来の目的に背く。組織とは、人間の弱みを中和し、無害化し、同時に、人間の強みを成果に結びつけるための特殊な道具である”

“組織を評価する基準は、天才的な人間の有無ではない。平凡な人間が非凡な成果をあげるようにさせられるか否かである”

“実績をもつ者には、機会を与えなければならない。問題ではなく、機会を中心に人事を行うことこそ、成果をあげる組織を創造する道であり、献身と情熱を創造する道である”

“組織は、一人一人の人間に対し、彼らが、その制約や弱みにも関わらず、その強みを通して、物事を成し遂げられるように奉仕しなければならない”

“成果をあげるエグゼクティブは、自分自身であろうとする。決して、他の誰かであろうとはしない。自分の仕事ぶりと、成果を見て、自分のパターンを識別しようとする。「他人には難しいが、自分には簡単にやれることは何か」を考える”

“自分が得意であると知っていることを、自分の得意な方法で行うことによって、成果をあげなければならない”

“自分を含め、あらゆる人間を機会として見なければならない。強みのみが、成果を生む。弱みは、たかだか頭痛を生むくらいのものであり、弱みをなくしたからといって、何も生まれはしない。弱みをなくすことにエネルギーを注ぐのではなく、強みを生かすことにエネルギーを費やさなくてはならない

人間の世界では、リーダーと普通の人たちとの距離は一定である。リーダーの仕事ぶりが高ければ、普通の人の仕事ぶりも高くなる。集団全体の成績を上げるよりも、リーダー一人の成績を上げる方が易しいということを知らなければならない。したがって、リーダー的な地位、すなわち標準を設定し基準を定める地位には、傑出した基準を設定できる強みをもつ人間をつけなければならない”

P.F.ドラッカー『経営者の条件』④

“マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909-2005)の名著『経営者の条件』<ダイヤモンド社>より名語録をご紹介していきます。【第4弾】

“成果をあげるためには、貢献に焦点を合わせなければならない。仕事から目を上げて、目標に目を向けなければならない。「組織の業績に影響を与えるような貢献は何か」を自らに問わなければならない。すなわち、自らの責任を中心に据えなければならない”

“しかし、エグゼクティブの大部分が、下に対して焦点を合わせている。成果ではなく、努力に焦点を合わせている。組織や上司が自分にしてくれるべきことや、自分がもつべき権限を気にしている。その結果、成果をあげられなくなっている”

“「どのような貢献ができるか」を自問するということは、自らの職務の可能性を追求するということである。そのように考えるならば、多くの職務において優秀な成績とされているものの多くが、実は、その膨大な貢献の可能性からすれば、極めて小さなものであることがわかる”

“直接的な成果は、常に最も重要である。組織を生かすうえで、栄養におけるカロリーと同じ役割を果たす。しかし、組織には、人体におけるビタミンやミネラルと同じように、第二の領域として、価値へのコミットメントと価値の再確認が必要である。組織は常に目的を持たなければならない。さもなければ、組織は混乱し、麻痺し、破壊される

“ビジョンや能力や実績において、今日の水準を維持しているだけの組織は、適応の能力を失ったというべきである。人間社会において唯一確実なものは、変化である。自らを変革できない組織は、明日の変化に生き残ることはできない

“エグゼクティブに最もよく見られる失敗の原因は、新しい地位の要求するものに応えて、自ら変化していく能力や意思の欠如である。それまで成功してきたのと同じことを続けていたのでは、失敗する運命にある”

“貢献に責任をもつべきエグゼクティブは、自らの産出物すなわち知識の有用性に強い関心をもたなければならない。成果をあげるエグゼクティブは、このことを知っている。なぜならば、彼らは、常に自分の目を上に向けているために、ほとんど無意識に、ほかの人間が何を必要とし、何を見、何を理解しているかを理解できるからである”

“人間、特に知識労働者は、自らに課される要求に応じて成長する。自分が業績や達成とみなすものに従って成長する。自らに対し、少ししか要求しなければ、成長はしない。極めて多くを要求すれば、何も達成しない人間と同じ程度の努力で、巨人にまで成長する”

P.F.ドラッカー『経営者の条件』③

“マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909-2005)の名著『経営者の条件』<ダイヤモンド社>より名語録をご紹介していきます。【第3弾】

“エグゼクティブが成果をあげるための第一歩は、現実の時間の使い方を記録することである。(中略)重要なことは、記録することである。しかも記憶によって記録するのではなく、リアルタイムに記録することである”

“時間の使い方は練習によって改善できる。しかし、時間の管理にたえず努力しないかぎり、仕事に流されることになる”

“自分がなすべき仕事を委譲してしまうのではなく、まさになすべき仕事に本当に取り組めるようになるために、ほかの人間にできることは任せてしまうことこそ、成果をあげるうえで最も重要なことである”

“事実上、時間を整理しすぎてしまう危険はあまりない。通常、誰でも、自分自身の重要度については、過小ではなく、過大に評価しがちなものである。そして、あまりに多くのことが、自分でなければできないと考えてしまう。極めて大きな成果をあげる者でさえ、極めて多くの不要かつ非生産的な仕事をしている”

ルーティン化とは、判断力のない未熟練な人たちでも、天才的な人間を必要としたような仕事を処理できるようにしてしまうことである。ルーティン化は、非常に有能な人間が過去の恐るべき危機から学んだことを、体系的かつ段階的な形にまとめてしまうことを意味する”

よく管理された工場は、退屈である。危機は予測され、対処の方法はルーティン化されている。そのため、劇的なことは何も起こらない。よくマネジメントされた組織は、退屈な組織である。そのような組織では、真に劇的なことは、昨日の尻ぬぐいのためのカラ騒ぎではない。それは、明日をつくるための意思決定である”

“組織内の上の方の人たちが、自分の時間のある程度以上、おそらく1割以上を、人間関係の問題、すなわち半目や摩擦、あるいは管轄範囲をめぐる争いや、部門間の協力にかかわる問題に使っているならば、ほとんど確実に人間が多すぎるといえる”

理想的に設計された組織とは、会議のまったく開かれない組織である。誰もが、仕事をするために知るべきことは、すべて知っている。仕事をするために必要な資源は、みなもっている”

“成果をあげるべき者たちが、自分たちの時間の一定割合以上を会議に使っているならば、それは、組織の欠陥の明らかな証拠である。しかも会議は、そのフォローアップのために、時間のかかる公式非公式の小会議を生む”

“会議は、目的をもって方向づけしなければならない。方向づけのない会議は、迷惑なだけにとどまらない。危険である。しかし、何よりもまず、会議は原則でなく、例外としなければならない。あらゆる人間が、常に会議している組織は、だれも何事も成しえない組織である”

“成果をあげるためには、自由に使える時間をひとまとめにする必要があることを知らなければならない。大きくまとまった時間が必要であるということ、そして小さな時間は時間として役に立たないということを知らなければならない”

時間は、最も稀少な資源である。しかも、時間を管理できなければ、何も管理できない。そのうえ、時間の分析は、自分の仕事を分析し、その時間のなかで何が本当に重要であるかを考えるうえでも、極めて容易かつ体系的な方法でもある”

P.F.ドラッカー『経営者の条件』②

“マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909-2005)の名著『経営者の条件』<ダイヤモンド社>より名語録をご紹介していきます。【第2弾】

“外部の世界における真に重要な事象は、傾向ではない。変化である。そしてこの外部の変化が、組織とその努力の成功と失敗を決定する。しかしそのような変化は、知覚するものであって、定量化したり、定義したり、分類したりすることはできない”

“危険は、コンピューターの論理やコンピューター言語に表せない情報や刺激を、エグゼクティブが軽視するようになることである。現実の知覚的な事象に盲目となり、過去の事象にのみ関心をもつようになることである”

“人類の歴史は、いかなる分野においても、豊富なのは無能な人間であることを示している。われわれは、せいぜい一つの分野に優れた能力をもつ人間を、組織に入れられるだけである。そして通常、一つの分野に優れた能力をもつ者は、他の分野については、並みの才能しかもたない。したがってわれわれは、一つの重要な分野で強みをもつ人間が、その強みを仕事に使えるように、組織をつくることを学ばなければならない”

“われわれに必要なのは、専門分野の一つに優れた人間をいかに活用するかを学ぶことである。すなわち、彼らの能力の成果を増大させる方法を学ぶことである。資源の調達を増大させられなければ、資源の産出を増大させなければならない。そして、成果を増大させる方法を学ぶことこそが、能力や知識という資源から、より多くのより優れた結果を生み出す唯一の手段である”

“成果をあげるものは、仕事からはスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。時間が何にとられているかを明らかにすることからスタートする。次に、時間を管理すべく、自らの時間に対する非生産的な要求を退ける

“時間はあらゆることに必要とされる。時間こそは、真に普遍的な条件である。しかるに、ほとんどの人が、この代替できない必要不可欠な資源を、当たり前のもののように扱っている。おそらく、時間に対する愛情ある配慮ほど、成果をあげるエグゼクティブを際立たせるものはない。しかし、一般に、人間は自分の時間を管理する用意ができていない”

“成果をあげるべき者の仕事の多くは、たとえごくわずかの成果をあげるためだけであっても、まとまった時間を必要とする。最小単位以下の時間では、まったく無意味である。何も達成できず、やり直さなければならなくなるだけである”

“知識労働者が多少なりとも成果や業績をあげるためには、組織全体の成果や業績に焦点を当てなければならない。ということは、彼自身も、自分の目を仕事から成果へ、専門分野から外部の世界、すなわち成果が存在する唯一の場所たる外部の世界へ向けるための時間を必要としているということである”

P.F.ドラッカー『経営者の条件』①

“マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909-2005)の名著『経営者の条件』<ダイヤモンド社>より名語録をご紹介していきます。【第1弾】

“そもそも自分をマネジメントできない者が、部下や同僚をマネジメントできるはずがない。ほかの人間をマネジメントすることは、主として、自分が模範となることによって行うことができる”

“成果をあげている者はみな、成果をあげる力を努力して身につけてきている。そして彼らのすべてが、日常の実践によって、成果をあげることを習慣にしてしまっている”

“現代社会が機能し、成果をあげ、さらには生き残れるかどうかは、組織に働くエグゼクティブが成果をあげられるかどうかにかかっている。成果をあげるエグゼクティブは、ますます現代社会における主要な資源となるつつある”

“知力や想像力や知識と、成果をあげることとの間には、ほとんど関係はない。それらの資質を成果に結びつけるには、成果をあげるための能力が必要である。知力や想像力や知識は、成果の限界を設定するだけである”

“知識労働者を直接あるいは細部にわたって監督することはできない。助力を与えることができるだけである。知識労働者は、自らを監督しなければならない

“知識労働は、量によって規定されるものではない。コストによって規定されるものでもない。成果によって規定される。そして、部下の数や、管理的な仕事の大きさは、知識労働の内容を知る手がかりとはならない”

“組織の内部には、成果は存在しない。すべての成果は、外部の世界にある。例えば、顧客が、製品やサービスを購入し、企業の努力やコストを、収入や利益に変えてくれるからこそ、企業は成果をあげることができる。”

組織の内部に生ずるものは、努力とコストだけである。企業にはプロフィットセンターがあるかのごとくいわれるが、単なる修辞に過ぎない。企業には「努力センター」があるだけである”

人間が少ないほど、組織が小さいほど、そして組織内の活動が少ないほど、外部環境への奉仕という組織にとっての唯一の存在理由からして、組織はより完全に近づく

“エグゼクティブは、外部の現実世界に直接触れるべく、特別の努力を払わないかぎり、ますます組織の内部に焦点を当てることとなる。しかも、地位が上がるほど、外部の出来事より、内部の問題に注意が向く

P.F.ドラッカー『現代の経営』④

“マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909-2005)の代表作『現代の経営』<ダイヤモンド社>より名語録をご紹介していきます。【第4弾】

“スキルにおいて高度の水準にない仕事は真摯さに欠ける。そのようなものは人を堕落させる。その下で働く人を堕落させる” (上巻P168)

“成果をあげるには、あらゆる経営管理者のものの見方と仕事の仕方を共通の目標に向ける必要がある。しかも一人ひとりの経営管理者に、期待されている成果が何かを理解させる必要がある” (上巻P172)

“自らの仕事を管理するには、自らの目標を知っているだけでは十分ではない。自らの仕事ぶりとその成果を、目標に照らして測定することが必要である。したがって、事業のあらゆる領域について、明確な共通の評価基準を与えられることが必要である” (上巻P180)

“評価基準は、定量的でなくてもよい。緻密でなくともよい。しかし、単純で明確、かつ合理的であることが不可欠である。注意と努力を向けるべきところへ向けるものであることが必要である。そして信頼のおけるものであることが必要である” (上巻P180)

“報告と手続きの数は最小限にとどめ、時間と労力を節約するためにのみ使うべきである。それは、可能なかぎり簡明なものにとどめておくべきである”(上巻P185)

“私はかつて、ある公益事業に対し、報告と書式がアマゾンのジャングルのようにはびこり、窒息しそうになっている状況を一掃するために、かなり抜本的な提案を行い、それを実行してもらったことがある。私は、あらゆる報告を二ヶ月廃止し、現場がどうしても必要だというものだけを復活させることにしてもらった。その結果、報告と書式の四分の三を削減した”(上巻P186)

“「凡人をして非凡なことをなさしめる」ことが組織の目的である。いかなる組織といえども、天才に頼ることはできない。天才は稀であり、手に入れられかどうかは分からない” (上巻P199)

“組織の良否は、人の強みを引き出して能力以上の力を発揮させ、並の人に優れた仕事ができるようにすることができるかにかかっている。同時に、人の弱みを意味のないものにすることができるかにかかっている”(上巻P200)

“優れた組織の文化は人の卓越性を発揮させる。卓越性を見出したならば、それを認め、助け、報いる。そして他の人に仕事に貢献するように導く。したがって、優れた文化は、人の強み、すなわちできないことではなく、できることに焦点を合わせる”(上巻P200)

“仕事から得られる満足や、仕事上の関係から得られる調和に基づかない人間関係は、うまくいっているように見えても貧しい関係であって、組織の文化を腐らせる。そのようなものは人を成長させず、単に順応させ、萎縮させる”(上巻P200)

“人の強みではなく弱みに焦点を合わせ、できることでなくできないことを中心に組織をつくることほど、組織の文化を破壊することはない。焦点は常に、強みに合わせなければならない”(上巻P201)

P.F.ドラッカー『現代の経営』③

“マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909-2005)の代表作『現代の経営』<ダイヤモンド社>より名語録をご紹介していきます。【第3弾】

“われわれの事業は何かを知るための第一歩は、「顧客は誰か」という問いを発することである。「現実の顧客は誰か」「潜在的な顧客は誰か」「顧客はどこにいるか」「顧客はいかに買うか」「顧客にいかに到達するか」を問うことである” (上巻P67)

“ガスレンジのメーカーは、自らの事業が料理の簡単な方法を提供することであり、自らの市場が料理の方法についての市場であり、自らの競争相手が料理の方法として受け入れられるものを供給する者すべてであると考えなければならない” (上巻P70)

“顧客が価値とするものは、あまりに複雑であって彼らにしか答えられないものである。憶測しようとしてはならない。常に顧客のところへ行って答えを求める作業を系統的に行わなければならない” (上巻P73)

事業は直感で行うことはできない。意思決定からその結果が出るまでの時間的な間隔がきわめて長くなっている現代の経済においては、直感に頼るマネジメントは、企業の大小にかかわらず許されざる贅沢である。優れたマネジメントのもとにある事業があげる利益は偶然のものではない。まさにあげるべくしてあげるものである” (上巻P80)

“何を測定するかによって、注意を払うべきものが規定される。何を測定するかを決定することによって、目標が目に見える具体的なものになる。測定の対象となったものだけが意味あるものとなる。それ以外のものは視野からはずされ、頭から消える” (上巻P86)

イノベーションには時間がかかる。今日リーダー的な地位にある企業の多くが、四半世紀以上も前の世代の活動によって今日の地位にある。今日無名の企業の多くが、今日行っているイノベーションによって明日のリーダー的な地位を得る。逆に、今日成功している企業の多くが、一世代前のイノベーションの成果を食いつぶしながら安逸を貪っている危険がある” (上巻P94)

“経営管理者のマネジメントにおいてまず必要とされることは、一人ひとりの経営管理者の目を企業全体の目標に向けさせることである。彼らの意思と努力をそれらの目標の実現に向けさせることである” (上巻P163)

“事業が成果をあげるには、一つひとつの仕事を事業全体の目標に向けなければならない。仕事は全体の成功に焦点を合わさなければならない。組織に働く者は、事業の目標が自らに求めているものを知り、理解しなければならない。これらのことが行われなければ、組織に働く者は方向づけを誤る。働きは無駄になる。チームワークの代わりに摩擦、不満、対立が生まれる” (上巻P166)

P.F.ドラッカー『現代の経営』②

“マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909-2005)の代表作『現代の経営』<ダイヤモンド社>より名語録をご紹介していきます。【第2弾】

“企業の目的として有効な定義は一つしかない。すなわち、顧客の創造である。市場は、神や自然や経済によって創造されるのでなく、企業によって創造される” (上巻P46)

“企業が自ら生み出していると考えるものが重要なのではない。特に企業の将来や成功にとって重要ではない。顧客が買っていると考えるもの、価値と考えるものが重要である” (上巻P46)

“企業は単に経済的な財やサービスを供給するだけでは十分でない。より優れたものを創造し供給しなければならない。企業にとって、より大きなものに成長することは必ずしも必要ではない。しかし、常により優れたものに成長する必要はある” (上巻P50)

“企業にとって第一の責任は、存続することである。言い換えるならば、企業経済学の指導原理は利益の最大化ではない。損失の回避である。企業は事業に伴うリスクに備えるために、余剰を生み出さなければならない。リスクに備えるべき余剰の源泉は一つしかない。利益である” (上巻P60)

“未来のリスクを賄うための利益、事業の存続を可能とし、富を生み出す資源の能力を維持するための最低限度の利益をあげることは、企業にとって絶対の条件である” (上巻P61)

事業は何かを決めるのは、生産者ではなく顧客である。社名や定款ではない。顧客が製品やサービスを購入して、自ら満足させる欲求が何であるかが事業を決める。したがって、「われわれの事業は何か」という問いに対する答えは、事業の外部、すなわち顧客や市場の立場から事業を見ることによってのみ得られる” (上巻P64〜65)

“マネジメントは、消費者の心理を憶測するのではなく、消費者自身から率直な答えを得るよう意識して努力しなければならない。したがって、「われわれの事業は何か」という問いを発し、正しく答えることこそ、トップマネジメントの第一の責務である” (上巻P65)