経営の名語録(8)

既成の観念にとらわれることほど、人の考えを誤らせ、道をとざすものはない。(中略)常識を破る、そのことでしか会社の永続はない。私はずっとそう確信してやってきた” 本田宗一郎著 『やりたいことをやれ』より

常識を破るとは、それまでの考え方、やり方、勝ちパターンを否定して変革を起こすことですが、言うは易し行うは難しで、いざ断行しようとすると様々なハードルや抵抗勢力が現れ、結局頓挫し、元の木阿弥になってしまう例は枚挙にいとまがありません。

ではなぜ変革は頓挫しがちなのでしょうか?

行動経済学的に考えると、その原因は「現状維持バイアス」で説明できます。現状維持バイアスとは、人には変化よりも現状維持を望む強い保守的傾向があり、それによって非合理な意思決定をしてしまうことを言います。そして、その根底には変化によって生じる損失やリスクに対する過度な恐怖心が存在します。もっとシンプルに表現すれば「変わらなくっちゃ。だけど怖い。だから今のままでいいや。何とかなるでしょ。」となります。

経営の本質は「変化適応」です。しかし、人には「現状維持」バイアスがかかっています。実はこの矛盾をしっかりと認識することが変革を成功させるための第一歩なのです。この認識なくして合理的な策を講じることはできません。

日本電産の永守CEOは4/21の日本経済新聞でこう語っています。“50年、自分の手法がすべて正しいと思って経営してきた。だが今回、それは間違っていた。テレワークも信用してなかった。収益が一時的に落ちても、社員が幸せを感じる働きやすい会社にする。そのために50くらい変えるべき項目を考えた。反省する時間をもらっていると思い、日本の経営者も自身の手法を考えてほしい

永守さんほどの経営者でも常識を破ろうと動き始めています。コロナ・ショックを乗り越えて永続していく企業の条件は、「勇敢なる自己否定」なのではないでしょうか。