“ここに非常な水泳の名人がいるとする。そしてこの名人から、いかにすれば水泳が上達するかという講義をきくとする。かりに三年間、休まず怠らず、微に入り細にわたって懇切ていねいに講義を受け、水泳の理を教えられ、泳ぎの心がけをきかされる。それでめでたく卒業のゆるしを得たとする。だが、はたしてそれだけで実際に直ちに泳ぎができるであろうか。(中略)講義をきくだけでは泳げないのである。”松下幸之助著 『道をひらく』より
皆さまはこれまでにどんな研修を受講してきましたか?会社からの指示で(半ば強制的に)受講した研修もあれば、身銭を切って能動的に受講した研修もあったでしょう。その中には面白くて前のめりになって聞いたものから、眠気をこらえるのに必死だったものまで、クオリティーも様々だったはずです。その上で質問です。「良い研修とはいかなるものでしょうか?」
これまで研修講師として500回以上の現場を踏んできた私の意見は、“良い研修とは良い行動変化をもたらすものである”ということです。つまり、その場ではどんなに面白くて役に立ったと思っても、その後の実務や実生活に変化が起きなければ良い研修とは言えないということです。
私が考える研修講師の本質的な役割は、新たな気づきを与え(Inspiration)、魂に火をつけ(Motivation)、望ましい行動変化を促す(Action)の3つに集約されます。そして研修の現場でできることはここまでです。その研修を真に実りあるものにするためには、聞き手が実際に行動しそれを習慣化しなくてはなりません。つまり、研修はその場だけで完結するものではないのです。
「研修の本質は研修の次の日の行動にあり」という私が作った格言があります。今後は、研修後のAction(具体的な行動変化)を念頭に置いて講義を聴いてみてください、より深く生産的な学びが得られることをお約束します。